EUR/USD: FOMCの協議でドル安
- 先週は静かに終了: 米国の感謝祭でした。しかし、前半はドル安が顕著で、EUR/USD は1.0222から 1.0448へと 200 ポイント以上の上昇でした。2021年6月16日以来の17ヵ月ぶりに200-日移動平均線 (SMA)を上回りました。
米国通貨がこのような動きをした理由には、米連邦準備制度理事会の今後の政策予測にありました。市場関係者は、政府の利上げペースが大幅に減速すると見込んでいます。そして、11月23日に公表されたFOMC(連邦公開市場委員会)の11月会合の議事録でこのことについての信ぴょう性が確認されました。
“FRBのリーダーの中には金融政策がFOMCの目標達成に十分な制限的な段階にあり、利上げスピードの減速に適切であるとした見解を示している人もいます。会合参加者の多くは、回復ペースの減速が今後において適切となる可能性が高いと考えています”。
一方で、FOMCメンバーの中には、インフレ率も米国経済の需給のバランスの不安定さもかなり高めのため、金利は"以前の予想よりは若干高めになるはず" と考えている人もいます。この二つの見解を組み合わせると、金融引き締め(QT)のピークは以前の計画よりは僅かに高くなりますが、時間をかけながら緩やかな上昇となることが結論付けられます。
FRBが4回連続で75ベーシスポイント(bp)の利上げをしたことについて振り返ってみてください。そして、今、市場は2023年に25 b.p.に踏み切られ、12月には50 bpの上昇が予想されています。現在、ドルの政策金利は4.00%です。
大西洋の反対側の動きに関しては、ECB が7月に50 bps、その後、75 bpsを2回引き上げ、現在は 2.00% です。スワップ市場は12月の50 b.p. の利上げが62%、75 b.p. が38%予想です。 なお、来年、ヨーロッパの政府が25 b.p. に踏み切る可能性もあります。この場合、ドルとユーロのひらきは残ったままで、EUR/USD は、再び 1.0000 のパリティラインを下回ることを促されます。
ECBの金融引き締め策は、今のところ、ヨーロッパ経済を抑制していないことに注目すべきでしょう。これに加え、ウクライナの武力侵攻に対するロシアへの制裁によるエネルギー危機から脱する道があります。EU諸国は、ロシア産のガスを共同購入から除外しました。欧州委員会のカドリ・シムソンエネルギー担当委員は、ロシア産のエネルギーをほかの代替エネルギー源に移行できると述べています。主に、ドイツのガス貯蔵所は既にほぼ満タンです。この冬のヨーロッパの停電や凍える寒さのリスクは、劇的に低くなりました。
こうした背景により、ドイツの製造業購買担当景気指数(PMI)は、下落予想に反して45.1から 46.7、ヨーロッパ全体としては47.3から 47.8の上昇でした。ドイツの企業景況感指数も回復を始めています: 予想の85.0に対して、実際は、84.5 から86.3への上昇でした。ドイツのGDP第3四半期の0.4% (第2四半期0.1%、予想 0.3%)の上昇が、ECBに今後の利上げに許可することになります。なお、多くのアナリストによると、これらのことがEUR/USD を1.0500-1.0600に押し上げる可能性があります。
今週は、1.0400で200日移動平均線SMAを超えて終了しました。スコシアバンクのアナリストは、強気な勢いが大きくなると見ています。同業者のコメルツ銀行は、1.0400 から1.0500で落ち着く可能性が高いとした見方です。アナリストに調査したところ全体としては、30%が上昇の継続、 40% が下落に転じると予想しています。残りの30% は、横ばい予想です。D1のオシレーター系では描写が異なります。オシレーター系の100%は緑で15% が買われ過ぎ圏内です。トレンド系では、緑が100% 優勢です。
EUR/USD の当面のサポートレベルは、1.0380台、1.0280-1.0315、1.0220-1.0255、1.0130、1.0070、0.9950-1.0010、0.9885、0.9825、0.9750、0.9700、0.9645、0.9580、最終的には9月28日の安値0.9535。次の弱気筋の目標は0.9500。強気筋は.0430-1.0450、1.0480、1.0620、1.0750、1.0865、1.0935でレジスタンスに直面するでょう。
来週は、マクロ経済統計が目白押しです。ドイツとユーロ圏の消費者物価(CPI)指数など重要な指標の速報値がそれぞれ11月29日(火)と30日(水)に発表される予定です。ドイツの失業率や米国の労働市場についても水曜に明らかになります。同日にパウエルFRB議長の講演が予定されています。木曜日は、ドイツの小売売上高と米国の製造業における企業活動(PMI)の情報が知らされます。12月2日の第一金曜日は、通常通り、失業率や米国非農業部門新規雇用者数(NFP)の発表があります。
GBP/USD: ポンドの上昇は、いつまで続くのか?
- 全体的にポンドの見通しは厳しいものの、多くの投資家、D1のトレンド系の85%、オシレーターの100%が短期的には強気のシナリオです。GBP/USD は、11月24日(木)に3ヵ月高値1.2153 をつけました。ユーロやG10の通貨と同様で、ポンドの材料ではなく、ドル安による上昇でした。
このペアの取引終了の鐘は、高値よりやや低い1.2095 付近で終了しました。スコシアバンクのストラテジストによると、イギリス通貨は9月26日の史上最安値(1.0350)から大きく反発して現在の水準を維持しています。イギリスの金融政策は安定しており、市場の信頼も厚く、ペアの上昇トレンドはかなり落ち着いています。スコシアバンクよると、これらの材料がGBP/USD の相場を当面1.2000 付近で安定させ、さらには若干高めになるかもしれません。
オランダの最大手金融グループのINGのアナリストは、さらに高い目標を挙げています。 “私たちは、ポジショニングがポンドの回復に大きく貢献しており、GBP/USD は1.22/23 付近に向かい一時的な上昇が見込まれ、再び、年内に高値を目にすることになるでしょう” と記述しています。
その一方で、アナリストは新たな弱気勢を無視しておらず、主要中央銀行がリセッションで利上げする年末と2023年の年明けに注意をするように促しています。以前、述べたように、イギリスのインフレ圧力がイングランド銀行(英銀)による利上げをより積極的に促す可能性があります。しかし、多くのエコノミストによれば、政府は過度な引締めはイギリス経済を2年間という長期にわたり停滞させるため、思い切った措置を避ける可能性が高くなります。予想では、イギリスの現在の財政赤字は2023-24年のGDPの5% 以上のままでしょう。このような英銀の慎重な対応により、イギリス通貨の下落が再び起きるかもしれません。
短期的な中央値予想では、明確なアドバイスがありません: アナリストの45% は強気側、まったく同数が弱気側、残りの10%が中立です。D1のオシレーター系では 100%が緑ですが、このうち 25% が、このペアの買われ過ぎを示しています。トレンド系では、85% 対 15%で、一週間前と同じで緑が優勢です。このペアのサポートは、1.2030、1.1960、 1.1800-1.1840、 1.1700-1.1720、1.1600、1.1475-1.1500、 1.1350、 1.1230、 1.1150、1.1100、 1.1060,、1.0985-1.1000、1.0750、1.0500 と9月26日の安値1.0350。このペアが上昇すれば、 1.2150、1.2210、1.2290-1.2330、1.2425 、1.2575-1.2610でレジスタンスに直面するでしょう。
今週のイギリス経済に関するイベントの中でも、12月1日(木)に発表される11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が注目されるでしょう。
USD/JPY: FRBのおかげによる円
- あるアナリストの記述とおり、"各国(米国以外) がFRB会合の議事録のおかげで、ハト派に戻るかなり助けとなり、ドルと米国債は暴落、世界中の下落通貨に休息を与えました" 。確かに、DXY ドルインデックスは下落、国債10年利回りは7週連続の安値です。
米国債利回りが下落したため、日本通貨は上昇通貨のなかでも筆頭となり、USD/JPY は再び11月の安値更新、今回は138.04 をつけました。
(米国債とUSD/JPYはかなり密接な関係があることを思い出してみましょう。債券利回りが上昇すれば、円に対するドルも上昇します。国債10年利回りが下落すれば、円は上昇で、このペアは下落トレンドのフォームになります)。
シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)のアナリストは、ドルの下落が続けば、このペアは 137.70 付近になるかもしれないと述べています。ING のストラテジストは、さらにこの点に注目しています。INGの予想では、国債10年利回りが2.75%付近で2023年を終えるようであれば、その時の USD/JPY は2022年5月-8月に取引されていた125.00-130.00 圏内になるかもしれません。INGによると、この12月のドル高の可能性については、142.00-145.00圏内を上回ることはないでしょう。10月21日の高値更新で152.00を突破することを問われることはないでしょう。
さらに、来年の4月8日のXデ-を忘れてはいけません。日本銀行の黒田東彦総裁の任期が終了し、ハト派ではない新たな総裁が就任する可能性があります。このようは変化がUSD/JPY を大きく下げる可能性があります。その後は、まさに、ING のストラテジストの予想どおりで2023年を終えるかもしれません。
現在の状況では、先週のペアは139.05で終了しました。 アナリストの10% だけが、今後、ドルが下げを取り戻そうとしてUSD/JPY が上昇に転じることに期待しています。45% は下落で安値更新を予想しています。残りの45% は予想が難しいとしています。D1のオシレーター系は次のとおり: 100% が下向き、このうち10% が売られ過ぎ圏内です。トレンド系では、85% 対15% で赤が多く見られます。
当面の強いサポートは、138.00-138.30、続いて 137.50-137.70、136.00、135.55、134.55 、131.35-131.75。レジスタンスは、139.85、140.60、142.20、143.75、145.30、146.85-147.00、148.45、149.45、150.00、151.55。 強気筋の目標は上昇して、高値152.00を超えての足固めです。その後は、1990 年の高値158.00付近。
今週は、日本経済に関する重要なイベントの予定はありません。
暗号資産(仮想通貨): 噂と不安の市場
- BTC/USD は、11月21日(月)に2年ぶりの安値水準での下落 でした。2020年11月21日も$15,500 付近で取引されていました。今回の底値は$15,482 でした。ビットコインは、S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック総合指数を押し上げているリスク感情の高まりでさらなる下落が抑えられました。このことに加えて、11月23日に公表された前回のFRBの議事録で市場がハト派的センチメントとみなしたことにもサポートされました。しかし、これにもかかわらず、暗号資産は大きな弱気圧力に押されたままで、多くのアナリストは、さらなる崩壊を避けられないと見ています。
JPモルガンのアナリストは、ビットコインの崩壊は終わっておらず、FTX破綻がドミノのように “連鎖清算”を引き起こすと警告しています。そして、今、市場はデジタル・カレンシー・グループ(DCG)の子会社であるジェネシスの破産の可能性に危惧しています。このことは10億ドルの資金調達が失敗した後に起きました。ジェミニ暗号資産取引所のレンディング部門では、ジェネシスの困難な状況を取り上げ、既に顧客の資産を凍結しました。ブルームバーグは、この金額を7億ドルと見積もっています。
投資家は既に自分自身の影にも怯えています。イーサリアムのヴィタリック・ブテリン氏の意味深なツィートの投稿が恐怖を増加させました。 詳細はありませんが、同氏は"何か大きなことが起きる噂がある" と投稿しました。ほぼ同時に、同氏が保有するイーサリアムを処分していると噂がどこからか流れ、暗号資産コミュニティへのさらなる警告となりました。ヴィタリック・ブテリン氏のものとされるウォレットから375万ドル相当の3,000 ETH がFTXのクラッシュの後、僅か数時間後の深夜に売却されていました。
詐欺罪で有罪判決を受けた元株式ブローカーで、ウォール街の狼と呼ばれるジョーダン・ベルフォート氏は、FTX 取引所の破産は意図的なものでサム・バンクマン・フリード氏はFTXで操作を実行したサイコパスであると信じています。
世界的に有名な金持ち父さん、貧乏父さんの著者であるロバート・キヨサキ氏は、デジタル資産の代表であるビットコインとイーサリアムの輝かしい未来を変わらずに信じていると述べ、大きな受難をやわらげました。同氏によると、ビットコインはサム・バンクマン・フリード氏と同じではありません。FTX 関連の状況は、非常に稀なケースで、このことだけで暗号市産業界全体の結論を出すべきではありません。
しかし、投資家はキヨサキ氏に耳を傾けることに焦っていないようです。分析会社のグラスノードは、11月21日の同社のレポートで最近の市場の弱さが“ビットコインホルダーの自信を打ちのめした” 、そして、迫り来る暗号資産の冬が2018-19の足跡を辿っていると記載しています。グラスノードによると、多くのクジラ(1,000 BTC以上のウォレット) はベストなタイミングを待ちながら底で横たわっています。
前回の弱気市場のピークでは、ビットコインを最高値から84%まで下落させました。2018年11月の $20,000 から$3,200の下落までに1年弱かかりました。今回は、11月21日の$69,000 の暴落から新たなサイクルの安値$15,482まで、同程度の時間を要して77.3% の下落です。同時に、一部のアナリストは2018年の暴落から目立った上昇が現れるまで数ヶ月かかっているためBTCの回復はすぐにはないと考えています。
また、先週は一日の取引額は14億5000万ドルで実現損失は史上4番目の急増でした。長期保有者のこのような暗号資産の処分は、“経験豊富な集団の恐れと降伏の兆候であることが多い” とグラスノードのレポートにあります。
IntoTheBlock プラットフォームによると、4,785 万の BTC 保有者のうち、2,456 万のアドレス (51%) が損失を出しています。ウォレットの45% は、黒字のままで、残りのアドレスは損得がない状態です。IntoTheBlock のアナリストたちによれば、前回の同じような状況が3月の市場暴落の後に観測されました。同時に、アナリストの1人は、市場が底をつけると通常、利益のないアドレスが50% を超えると付け加えています。つまり、暗号資産のこれ以上の下落はないとほのめかしました。しかし、統計は逆を示しています: 2018年12月に損失を被ったアドレスは55%となり、この数字は2015年の弱気トレンドでは 62% を超えていました。
BitMEXの元CEOであるアーサー・ヘイズ氏は、ビットコインのマイナスの見方を$10,000までに下げています。アメリカの経済学者、ベンジャミン・コーウェン氏も相場のさらなる下落を否定していません。同氏は、最近、ビットコインが現在、興味深いポイントにいることを示した過去3回の弱気市場と現在を比較したチャートを公表しました。なお、ATH (史上高値)から379 日が経過しています。過去2回の弱気市場の期間は2018年が363日、2015年が 410 日でした。その一方で、現在のROI (投資収益率) は0.247です。以前は、相場のさらなる下落が見込まれる0.2を常に下回っていました。
もう一つのチャートは、通称Dave the Waveと言われる有名な暗号資産アナリストです。 同氏のチャートでは、ビットコインは現在、今までサポートとされていた長期的なLGCの下値にいます。BTCの経緯では、既にこのカーブを下回る相場の推移が見られます: 例えば、2015年の弱気市場やCOVID-19の大流行が始まった2020年3月の崩壊。しかし、当時、このような下落は長くは続かず、暗号資産はすぐに長期的なサポートを回復させました。通常、これは弱気市場を終わらせ、新たに強気市場が始まることを示していました。
Dave the Wave は、自身のチャートに今月末は注意するようにコメントしています。同氏によると、テクニカル的には相場の動きは、まだ、壊滅的ではないがモデルの支持線がほとんど安定していません。ビットコインの今月の終値が$16,000を下回れば、LGC サポートは崩壊する可能性が高く、下落は続くことになります。なお、その逆もあり: 維持して反転となれば、新たな強気市場の始まりのシグナルの可能性があります。
一方、このレビューの執筆時点(11月25日、金曜日の夕方)、 BTC/USD は$16,520 圏内で取引されています。暗号資産市場の時価総額は0.833兆ドル(1週間前は0.832兆ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、7日間で23 から20 ポイントの下落で、非常に恐怖から抜け出せていません。
NordFX Analytical Group
注意: こちらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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