2022年12月19日‐23日のFXと暗号資産(仮想通貨)の予想

EUR/USD: FRBはハト派になりたがらず。ECBも同じく。

  • 先週は2つに区切られます: 米連邦準備制度理事会の FOMC (連邦公開市場委員会) 会合の前後で。この会合前夜である12月13日(火)の米国のインフレデータは衝撃的な結果でした。7.3%と予想されていた11月の消費者物価指数(CPI)は7.7%から7.1%(前年比)に下がり、ほぼ1年ぶりの低水準、コアインフレ率は6.3%から6.0%に低下しました。これに反応した市場は、状況が順調なことにより、FRBがタカ派からハト派へ変わる時期だと判断しました。または、金融政策を大幅に緩和する時期だと。この予想により、10年利回り国債は3.60% から3.43%に、DXY ドルインデックスはピークに達した後、105.07 から103.60ポイントで、この6ヵ月で最も低い水準に下落しました。これに伴い、株式指数(S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック)は上昇、EUR/USD は1.0672に急騰しました。

    リスク選好とドル高歓迎派の喜びは、長くは続きませんでした。FOMCでは会合で政策金利を50 ベーシスポイント(bp) 引き上げの 4.5% に決定しました。これは、まさに、市場関係者の予想通りでした。その後の記者会見ではサプライズが期待されましたが、米中央銀行はタカ派のままであることが示されました。ジェローム・パウエル議長は、インフレが安定的な下落傾向であると確信できるまでは、金利は引き締め水準であることに言及しました。政策金利は2023年に5.1% まで引き上げられ、2024年までその水準を維持することになるでしょう (9月の声明で4.6% が到達点と述べていたことを振り返ってみてください)。ジェローム・パウエル議長によると、これが景気後退の引き金になることをFRBでは認識しているが、インフレ抑制のための代償をいとわないということです。こうした発言を受けて、状況は180度変わりました: DXYは上昇、株式指数は急落、 EUR/USD は、140 ポイント以上の下落でした。

    今年最後の欧州中央銀行の会合も先週の12月15日(木)にありました。FRB同様にECBも50 bpの利上げです: 上限2.5%で予想に完全一致。ECB のクリスティーヌ・ラガルド総裁も大西洋の反対側と同じく、記者会見でタカ派的な姿勢を示し、ユーロ圏の量的引き締め策(QT)を終了しないことを明らかにしました: ユーロの金利は、2023年にさらに複数回引き上げられることになるでしょう。現在のところ、ドルとユーロの金利差は200 bp (各、4.5% 、2.5%)。スワップ市場では、ヨーロッパ政府が来年、さらに100 bpの引き上げの可能性があり、EUR/USD支えになると予想しています。各金融機関の相場予想については、今後のレビューをお読みください。

    11月のドイツとユーロ圏製造業購買担当者景況感指数 (PMI)とユーロ圏の消費者物価指数 (CPI) の発表が週終わりの12月16日(金)にありました。消費者物価指数は、市場センチメントに大きな影響を与えませんでした: CPI は年率で10.6% から10.1%に下がりましたが、予想の10.0%を上回りました。これらのマクロ統計の発表後、このペアは1.0590で終わりました。

    アナリストの40% は、近くユーロ高となり、EUR/USD は上昇、50% はサンタクロースが米ドルを助けると予想しています。残りの10% は、前者も後者のどちらの予想も支持していません。D1では、異なってきます。オシレーター系の75%が緑、 10%がグレー、15%が赤の状況です。 トレンド系も緑が多く、80%で20% が赤です。EUR/USD の当面のサポートは1.0560 台、その後は1.0500、1.0440、1.0375-1.0400、1.0280-1.0315、1.0220-1.0255、1.0130、1.0070に続いてパリティ圏内の 0.9950-1.0010。強気筋では、1.0620、1.0675-1.0700、1.0740-1.0775、1.0865、1.0935がレジスタンスになります。

    来週は、12月22日(木)に米国第3四半期GDP、23日(金)に耐久財受注と米国の個人消費支出の発表があります。

    ご注意! 今年のクリスマスとお正月は週末になります; しかし、この期間の取引スケジュールをご覧頂くことをお勧めしています。取引スケジュールはNordFXカンパニーニュースにあります。

GBP/USD: 市場は、もはやイングランド銀行を信用していない

  • EUR/USDよりも 大きな失望感が英ポンドを待ち受けていました。12月14日に6ヶ月ぶりの高値となる1.2450をつけたGBP/USD は、その後、1.2119 に下落、終値は1.2160でした。

    先週のイギリス経済統計は、かなり多く、様々な印象でした: 時には、緑、時には、赤。GDP は0.5%増で、予想の0.4%を上回りました。製造業部門も9月のゼロ推移の後は0.7% 増です。11月のCPI のような重要なインフレ指標は10.7% でした(1981年以来の高水準 - 前月11.1%)。しかし、小売売上高は10月の0.9%から11月は0.4%に減少です。失業率は3.6%から3.7%に上昇です。 製造業購買担当者景況感指数(PMI) は、11月の46.5に対して12月は44.7に下落しました。対照的に、非製造業部門では11月の48.8と予測の48.5に対して50.0 の上昇です。

    このようなマルチベクトル統計が市場関係者を非常に混乱させたようで、ポンドではなくドルに注目が集まりました。イングランド銀行(英銀)も先週は利上げ決定をしたのですが。FRBやECBと同様に、政府は50 bp 引き上げの年利3.5% (上限14-年)を決定しました。しかし、英銀の声明でこれらの国よりもハト派的であることがわかりました。政府によれば、インフレが既にピークに達している可能性があります。また、金融政策委員会のメンバー9人のうち2人は、金利はすでに十分に高く、物価上昇圧力が弱まる時期にあると考えています。

    今回の会合前は、最高で4.6%の 利上げが予想されていました。会合後、スワップ市場は8月までに4.5%予想を引き下げました (つまり、合計で100 bpの追加)。イングランド銀行による最近の市場関係者調査では、予想中央値はさらに低く、2023年3月をピークに4.25%にとどまっています。

    これらの予想がイギリス通貨に強い圧力をかけています。つまり、コメルツ銀行のエコノミストによると、ポンド回復の可能性は非常に低いということです。“イングランド銀行が数ヶ月もためらっていたので、市場関係者は急に大きなタカ派路線になることは考えにくいと見ています”と同行では記述しています。“つまり、ポンドはユーロにもドルにも勝てるチャンスはないでしょう”。

    GBP/USDの短期的な中央値予想では、かなり中立のようです:アナリストの 45% は強気筋、同数が弱気筋、残り10%がコメントを控えています。

    D1 も混沌としているようです。オシレーター系では、30%が緑、25% が赤、45%がグレーです。 トレンド系では、65% 対 35% で緑が多くなっています。サポートレベルは、1.2085-1.2115、1.2030、1.1940、1.1900、1.1800-1.1840、1.1700-1.1720。 このペアが上昇すれば、1.2200-1.2225、 1.2270、1.2330-1.2345、1.2425-1.2450、1.2575-1.2610、1.2700 、1.2750でレジスタンスに直面するでしょう。

    今週のイギリス関連のイベントでは、2022年第3四半期GDPが公表される12月22日(木)が注目です。また、12月23日(金)も、もちろん、クリスマス関連により取引時間が早まるので注意してください。

USD/JPY: 日本銀行に期待するもの

  • これまでのペアと同じように、USD/JPY は、米国のインフレデータとFRB議長の発言の両方に反応しました。ただ、EUR/USDGBP/USDと違い、このペアは、この2週間、取引幅から外れていません。134.25-137.85の境界線の一方、もしくは、両方を突破はありません。このバランスは、ドルも円も安全通貨であることによる可能性が高いようです。もちろん、金利の差では、ドルの方が優位です。しかし、日本銀行(日銀)による為替介入が何度かあり、最近では、ドル高を抑えるだけでなく、大幅に押し下げている事にも成功しています。

    既に、述べましたが、このペアの未来は、引き続き、米国と日本の金利の差に左右されるでしょう。FRBがややタカ派で日銀が超ハト派のままなら、ドルは円に対して優勢です。11月10日のような日本銀行の為替介入は、現在の水準ではあり得ないでしょう。政策金利の引き上げは有効でしょうが、日本銀行(日銀)は、12月20日の会合でも据え置く可能性が非常に高いです: マイナス水準の -0.1%。金融政策の根本的な変更は、来年4月8日以降になると思われます。日銀の黒田東彦総裁がこの日に退任するので、より積極的な立場の後任者になる可能性があるからです。確かなことではありませんが。

    もう一つの期待は、中国経済の懸念が再浮上することです。なお、中国人民銀行は12月20日(火)にも人民元の金利決定をする予定です。

    12月16日(金)のUSD/JPY の終値は136.70でした。アナリストの直近予想では、 GBP/USDの予想と全く同じです: 45%/45%/10%。D1のオシレーター系では次のとおり: 25%が下向き、 40%が上向き、35%が横ばいです。トレンド系では、60% 対40% で赤が多くなっています。当面のサポートは、136.00、その後は134.40、133.60、131.25-131.70、129.60-130.00、128.10-128.25、126.35、125.00。レジスタンスは、137.50-137.70、138.00-138.30、139.00、139.50-139.75、140.60、142.25、143.75。2022年10月21日の高値更新 と152.00 を超えての足固めという強気筋の目標は、かなり先の話であり、現実的ではありません。

    12月23日(金)は、日本銀行の金利決定に加えて、金融政策決定会合議事録要旨の公表もあります。市場関係者は、政策変更の小さな手がかりを掴もうとするでしょう。しかし、変更の可能性はゼロに近いです。

暗号資産(仮想通貨): サンタクロースだけが唯一の希望

  • FRBの会合により、投資家のリスク選好は大きく和らいだようです。株式指数(S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック) が週の前半を通して上昇すると暗号資産は引きずられるように急伸、米国のインフレデータ発表後、12月14日(水)の夕方は全て転落しました。世界的な景気後退が懸念される中、木曜日と金曜日も下落が続きました。BTC/USD の週高値は$18.381でしたが、終値はかなり低い$16.830 圏内でした。

    暗号資産業界の総体的な状況も、価格上昇の助けにはなっていません。11月のFTX の破産だけでなく、今年は大きな衝撃があったことを思い出してください。まず、5月のTerra(テラ)エコシステムの崩壊です。 Compute North、Voyager Digital、Celsius Network、Three Arrows Capital、 Blockfi も破産手続きをしました。いくつかの試算では、これらのことから、数百万人の顧客が数十億円の損失を被ったと言われています。

    ここ数日の出来事も期待を与えるものではありません。FTX暗号資産取引所の創業者、サム・バンクマン・フリード氏は米国の検察庁により8つの罪で起訴された後、バハマで逮捕されました。検察庁によると、すべての刑事事件で最大115 年の懲役刑を受ける可能性があります。市場関係者は、FTXの競争相手だったバイナンス取引所の控えめに言っても奇妙である財務報告書に不安を感じています。そこには、3つの指標しかなく、会計業界関係者から戸惑いと批判の声が上がりました。

    今年も、あとわずかですが、ビットコインと暗号資産市場全体の上昇の助けとなるのは、12月末に株価指数が突然上昇し始める現象であるサンタクロースラリーだけです。このラリーは通常、月末の月曜日に始まり、7取引日間続きます。しかし、時にはサンタクロースは、リスク資産ではなく、ドルを助けます。そして、北極ではなく、南極へと向かうのです (サンタクロース・ラリーについては、NordFXのお役立ち記事にあります)。

    アナリストの一部では、ビットコインが数日のうちに、$18,000 付近での足がかりを築くと期待しています。そして、年内に$20,000 の高値をつける可能性が高いと考えています。

    このような状況で、Plan Bのニックネームで有名なアナリストよると、ビットコインは 再び上昇放物線上です。最新の予想では、BTCは2023年に$100,000 になる可能性があります。Kitco Newsのシニアアナリストであるジム・ワイコフ氏も強力な買い手が介入したため、現在の状況でBTCが強気な上昇を展開しようとしているという意見です。

    BitMEXの前CEOであるアーサー・ヘイズ氏もジム・ワイコフ氏とは、根拠が違いますが同様の見解を示しました。ヘイズ氏は、ほぼすべての“無責任な組織” によるコインが売りつくされため、ビットコインは現在のサイクルの安値であると考えています。同氏は、財政難に直面したとき、中央集権型借入企業は、最初に借り入れをして、次に保有しているBTCを売却、その後破綻すると説明しました。“このような‘ヒーローたち’の残高を見れば、ビットコインはありません。彼らは破産前に売っているのです" 。つまり、ヘイズ氏によれば、ビットコイン相場の下落は、このような破産に先立っているのです。同時に、同氏は大規模清算が終了したと考えています。

    ARK インベストのキャサリン・ウッドCEO も中央集権型企業に否定的でDeFiにいては肯定的です。同氏の見解によると、 投資家は危機により完全に透明性のある分散型ネットワークがいかに重要であるかを学んだので、DeFi はさらに発展していくでしょう。“中央集権型暗号資産企業の破産で投資家は透明性のある分散型ネットワークに投資した投資家たちは何が起きているかを目にしました。彼らは時間通りに自分たちの資産を引き出すことができました。大きなレバレッジを使っている人たちですら生き残れました” とキャサリン・ウッド氏は述べています。そして、ウッド氏は、サム・バンクマン・フリード氏が透明性のある分散型のビットコインを不透明な中央集権型が引き起こした危機の間も自分がコントロールできないため、常に嫌っていたと加えています。

    BitMEX の元 CEO であるアーサー・ヘイズ氏によれば、デジタル資産市場は米国連邦準備制度理事会の印刷機がまたもや起動する2023年に部分的に回復すると期待しています。ブルームバーグ インテリジェンスのシニア ストラテジストであるマイク マクグローン氏も、中央銀行からの新たな現金流動性の流れを期待しており、来年はビットコイン市場が1年半の下落トレンド後の輝かしい時期になると述べています。しかし、同氏は、その一方で、金融緩和がなければ、世界はさらに深刻な不況に突入することになり、すべてのリスク資産マイナスの影響を受けると付け加えています。

    元トレーダーで現在はテレビ司会者・映画監督のマックス・カイザー氏も、BTCは2023年に必ず追いつき、2024年の半減期までに大きな上昇を繰り広げるかもしれないと考えています。同氏の考えによると、ビットコインの上昇は、今後10年に渡って続きます。そして、キャサリン・ウッド氏が述べているように、2030年には1コインあたり、100万ドルになるでしょう。

    一方、このレビュー執筆時 (12月16日金曜日の夕方)、ETH/USD は、$1,200、BTC/USD は、$16,830で取引されています。今週の暗号資産市場の時価総額は、ほぼ 4.0% 減少で、0.818 兆ドル (1 週間前は 0.852 兆ドル)です。Crypto Fear & Greedインデックスは、7日間で 3 ポイント上昇の26から 29で、恐怖のゾーンのままです。

 

NordFX Analytical Group

 

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