2020-2022年ドルとユーロ: 予想と現実

通常、私たちは、世界の主要機関による今後の為替の見通しについて年末年始にかけて発表してきました。2年前も1年前もそうでした。つまり、今後だけではなく、過去のアナリストが正しかったかどうかについて分析します。

 

 

2020-2021: COVID 時のEUR/USD

2019年12月に 中国の武漢で最初にCOVID-19が記録された時、世界的な感染についての話題はありませんでした。しかし、当時でさえ、フィナンシャルタイムズは、米連邦準備制度理事会の量的緩和政策(QE)と安いドルの流動性が市場に流れ込んだドル安といったシティグループのアナリスト予想を掲載しました。

パンデミックの勢いが増す中、この予想が正しかったことが証明され始めました。2020年3月には10年ぶりとなるドル安が始まりました。FRBの印刷機はフル稼働となり、米国市場は安いドルで溢れました。金融刺激策の縮小、また、利上げ予定もありませんでした。2020年3月22日に1.0630 だったEUR/USD は、翌年の2021 年に1.2300になりました。

2021年を迎えてもこのペアは、上昇を続けていました。しかし、この傾向は... 一週間も続きませんでした。1月6日には1.2350で、これが年初来高値でした。 1月7日は、がらりと変わり、ドルは下げ幅を取り返し始めはじめました。

米国通貨は5月末までコロナの感染状況推移とFRBのリーダーたちの発言に従って正弦波に沿った動きでした。しかし、米中央銀行が夏前にハト派からタカ派に明らかに変わったため、国内経済は回復、投資家は現在の"わずかな" 0.25%の政策金利の引き上げを確信しました。これにより、ドルは堅調に推移、EUR/USD は、1 年で 1,000 ポイント下げた1.1350で終わりました。

 

2022: ロシア‐ウクライナ紛争でのEUR/USD

FRBの金融政策(QT)とさらなる利上げが見込まれることから、投資家は米国通貨の見通しに楽観的でした。アナリスト予想も楽観的なようでした。労働市場を含めた米国経済は、順調に回復、GDP成長率は5%と予測され、これにより連邦準備制度理事会は積極的にインフレ抑制の機会を得ました。2023年末までに少なくとも1.5%までの利上げは、疑われる余地はありませんでした。G7諸国の中央銀行が物価上昇により寛容的な立場であるハト派であることもさらなるドル高の確信となりました。

INGグループ(Internationale Nederlanden Groep)のアナリストは、2022年の第4四半期のEUR/USD が1.1000で取引されると予想しました。世界最大級の金融機関である(香港上海銀行) のアナリストは、INGと同じでした。こちらのアナリスト予想の “主な根拠は” “2つの要因に基づくものでした: 1. 世界経済成長の鈍化、2. 米連邦準備制度理事会の利上げの可能性に対する段階的な移行"。また、HSBCは、ECBが2022年末までユーロの利上げはないと見ていました。

CIBC (カナダ帝国商業銀行) のアナリストたちも、また、米ドルの支持で、2022年の最後の2半期における目標を 1.1000に設定しました。JP モルガンフィナンシャルホールディングスでは、やや控えめな見通しで1.1200を示しました。

しかし、すべての金融機関がドル高支持ではありませんでした。ちなみに、バークレー銀行では、ドルが非常に過大評価されていると見ていました。こちらの銀行のエコノミストは、世界経済の回復とインフレが収まることでリスク選好やコモディティが高くなり、ドルがやや下落すると予想しました。バークレーによるEUR/USD のシナリオでは次のとおり: 2022年第1四半期- 1.1600まで上昇、第2四半期- 1.1800、第3四半期と第4四半期- 1.1900圏内の推移。   

ロイターは、ウォール街を代表する大手金融機関にインタビューをおこない、今後12ヵ月の外国為替の推移の状況について発表しました。回答金融機関は、前述のJPモルガンとバークレイズに加え、金融コングロマリットのモルガン・スタンレー、ゴールドマンサックス、そして欧州最大の資産運用会社であるアムンディでした。

モルガン・スタンレーは、FRBの利上げがかなりスムーズに進む一方で、ほかの中央銀行はハト派からタカ派に代わるという考えでした。これが、政府の動きの収束につながり、ドルに圧力をかけ、EUR/USD は、1.1800に上昇となるはずでした。

ゴールドマンサックスも同じ目標で1.1800でした。アムンディは、FRBが"市場の期待を驚かせるようなことはほぼできない" と述べながらも、勢いは"ドルに対して概ねポジティブのままでしょう" と同じ意見でした。こちらの機関のストラテジストによれば、 EUR/USD は1.1400前後で2022年を終わるはずでした。

ING、HSBC、CIBCのアナリストが最も近い予想だったと言えるでしょう。そして、100%的中する可能性もあります。あるいは、 バークレイズ、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックスなどのアナリストの予想が正しいかもしれません。しかし、全世界が2020年のコロナウィルスのパンデミックにより、ひっくり返り、2022年には戦争が世界の生活に入り込んできました。ロシアのウクライナへの武力侵攻とその後のロシアへの制裁により、この地域から離れた多くの国々さえも、経済危機、エネルギー不足、インフレ上昇の原因となりました。

EU諸国は紛争地域に近く、ロシアの天然エネルギー源に大きく依存しており、核の脅威や紛争が自国に移るリスクがヨーロッパ経済にとって大打撃となり、ECBは可能な限り慎重な対応を余儀なくされました。アメリカは、かなり有利な立場であることに気づき、FRBは継続だけでなく、QTや利上げペースを加速することもできました。EUR/USD は、7月14日に20年ぶりにパリティ水準の1.0000 を下回り、9月28日に0.9535 の安値をつけました。

ドル高の主な要因は、FRBによる発言や動きによる借り換え利率の上昇見通しでした。金利は、2020年3月15日(パンデミックが始まった当初)から2022年3月16日までは0.25%の水準でした。そして、25ベーシスポイント(bp)の引き上げに続き、50bpsの引き上げ、さらには75bpsの引き上げが4回にわたり実施されました。その後、米中央銀行は引き締めペースを緩め、2022年の最後の会合で50bpsの引き上げにとどまり、その後は4.50%になりました。

ECB は、ユーロの金利を0.00% で暫く維持していました。しかし、FRBに続いて金融引き締めに転じることを余儀なくされました。政府は、7月21日の会合で0.50%、9月8日に1.25%、10月27日に2.00%、そして12月15日に2.50%へと引き上げました。

 ECBが金融引き締めを始めたことは、ユーロにとってプラスになりました。冬の寒さを前に欧州が石油とガスの貯蔵施設を満たし、また、ロシアからのエネルギー資源の代替方法を見出したことも、ユーロの助けとなりました。この結果、EUR/USD は、再び 1.0000 水準を上回り、12月15日には1.0735 の高値となりました。

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つまり、2021年1月06日から2022年9月28日までの間に、ユーロは米ドルに対して2,815も下げました。 その後、ユーロは巻き返し、年末までには1,200 ポイントの40%以上を取り戻しました。この2つの通貨の2023年についてのアナリスト予想については、次回の1週間後のレビューでお伝えします。

それまでの間は、あなたやあなたの愛する人々の成功、経済的な繁栄、健康に恵まれた幸多き年になることをお祈りも仕上げます。この3年間とは違って、来年はポジティブの出来事だけで満たされますように。良いお年をお迎えください!

 

NordFX Analytical Group

 

注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。

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