2023年のドルとユーロから見えてくるもの

先週は、最も人気のある二つの通貨の2020-2022年における動向と大手金融機関のストラテジストがEUR/USDについてどのように予想して、それが、どの程度、正確であったかを分析しました。今週は、専門家たちが2023年について、どのような予想をしているか見てきましょう。

 

ただ、予想は大きく異なることに、すぐに留意してください: ここ数年、 “想定外の出来事” がかなり多く、将来に向けて解決しなくてはいけない問題がかなり多くあり過ぎます。

今後の政治情勢はどうなるのでしょうか、FRBやECBの金融緩和政策の方向性やペースはどうなるのでしょうか、景気後退や労働市場はどうなるのでしょうか、インフレに立ち向かい、エネルギー価格を抑制することは可能なのでしょうか? これらの質問などについての答えは、今のところ、ありません。多くのことが明らかでなく、専門家の意見も一致していません。

EUR/USD が 0.8500 前後で 2000 年から 2002 年の安値に近づくという見方もあれば、2008年のように1.6000に上昇するという見方もあります。もちろん、これらは極端な数字です。これらの数字のどちらにもとどかない可能性は高く、オシレーター系ではかなり狭い幅となるでしょう。少なくても、これが大方の著名な専門家の見方であるため、紹介していきます。

 

EUR/USDの強気筋の意見

ドイツ銀行のストラテジストたちは、2023年のこのペアが2022年2月-3月の値に戻るという見方をしています (2ヶ月の変動幅は1.0800-1.1500)。彼らの考えでは、政治情勢が変わらず、2022年後半の状態がこのまま続いてもこの可能性があります。ただ、彼らの見解では、このようなドル安はFRBが金融緩和を始めた時にのみありえると述べています。

そして、これは起きないかもしれません。ジェローム・パウエルFRB議長は、12月のFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見でインフレ率の安定した下落傾向を確信するまでは、金利はピークのままにとどまると発言していたことを振り返ってみましょう。政策金利は2023年に5.1%、そして、2024年までこの水準を維持することになるでしょう (9月の発言では4.6%がピークと言及していたことを思い出してください)。ジェローム・パウエル議長によれば、FRBはこれが景気後退をもたらすことになると理解しているが、インフレ抑制のためには厭わないと述べています。

米国の中央銀行の立場が利上げの停止を呼びかけている国際連合の立場に反していることに注目すべきです。国連は、これ以上の金融引き締めがアメリカの物価上昇で、すでに大きな被害を受けている途上国に深刻な打撃をもたらすと考えています。

FRBに圧力をかけることに加え、バランスを維持、さらにはドル安の立場にする別の方法があります。ECBやほかの中央銀行が利上げをこの数ヶ月で発表です。前回のレビューで既に取り上げていますが、ユーロは2022年の最後の3ヶ月間でかなりドルを押し下げ、EUR/USD はおよそ1,200 ポイント上昇しました。

ECB のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、海を越えた相手国と同様、12月15日の記者会見でタカ派的な姿勢を示し、ユーロ圏の量的引き締め(QT)はこれで終わらず: 2023年に、ユーロ金利はさらに数回の引き上げることになると述べています。ECBも 3月からバランスシートの縮小をはじめることを予定しています。

2023年のはじめ、ドルとユーロの金利差は200bp(それぞれ4.5%、2.5%)でした。スワップ市場では、ヨーロッパ政府が来年は、さらに100 bp の利上げをすると見通しており、これがEUR/USDのサポート材料となっています。

バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのエコノミストは、この展開に同意しています。 “私たちの基準値のシナリオでは” 、“2023年はじめは、ドル高が続き、FRBの停止後はさらに安定した下落軌道へと移行” と記述しています。バンク・オブ・アメリカによれば、第二四半期から徐々にドルは下落して、EUR/USDは 1.1000に上昇となります。

ドイツのコメルツ銀行もこのシナリオを支持しています。 “FRBの金利変更とECBが利下げをしないことを考慮すると […]、2023年の私たちの EUR/USD ターゲットは1.1000です” とこちらの金融グループのエコノミストは予想しています。

フランスの金融コングロマリットであるソシエテ ・ジェネラルもドル安で、このペアの上昇支持です。ソシエテ ・ジェネラルのチーフグローバルFXストラテジスト、キット・ジュケス氏は、“私たちは、次のように予想しています” と述べています。 “米国とドイツの 10 年債の利回り差は第 1 四半期の終わりまでに 180 ベーシス ポイントから 115 ベーシス ポイントに、2 年物金利の差は 190 ベーシス ポイントから 1% 未満に縮小するでしょう。このような利回りと戻しを前回見たのは、EUR/USD は1.1500 を上回っており、9月末に 0.9500 に達した時と同じ水準で上昇すれば、第 1 四半期の終わりまでには達成することになるでしょう"。

 

EUR/USDの弱気筋の意見

経済予想機関のアナリストたちの意見では、このペアは来年、1.1160 まで上昇しますが、その後は、なだらかに下げていき、第2四半期末に1.0430、第3四半期末に1.0050、年末には0.9790とのことです。

Internationale Nederlanden Groep のエコノミストは、かなり極端な立場です。ING は、2022年のすべての圧力が2023年も続くと確信しています。エネルギー価格の高騰がヨーロッパ経済の圧力となり続けます。ECBよりも前に米連邦準備制度理事会の印刷機が停止すれば、さらなる圧力がかかるでしょう。オランダのこの大手金融グループのアナリストは、2023年第1四半期には1ドルあたり0.9500ユーロの為替レートが妥当であり、第4四半期には1.0000のパリティまで上昇する可能性があるとみています。

多くの権威ある専門家たちも米ドル支持です。つまり、シカゴ大学ハリススクール・オブ・パブリックのデイブ・シェイブス氏はロシアとウクライナの紛争がヨーロッパ全体の経済成長を鈍化させ、ヨーロッパのエネルギー危機を2023年、場合によっては2024年まで長引かせる恐れがあると考えています。研究者によれば、これがドル高をもたらす具体的な要因となります。 “米国は、常に政治情勢や軍事紛争の不透明の中で安全通貨の一つとして考えられていました” と同氏は述べています。

金融サービス会社StoneXのFX機関の責任者であるエリック・ドナヴァン氏も同じ見解です。“ドルがこれほど上昇した主な理由は、依然、安全通貨と考えられており、市場が恐怖の状態の間はドル高になるからです”と説明しています。つまり、ドルはこの戦争が続く限り、ユーロに対して高いままでしょう。

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昨年である2022は、気が休まる年ではありませんでした: コロナウィルスの大流行による課題にウクライナ紛争の悲劇が重なり、世界経済全体にとっての打撃となりました。しかし、伝説のソロモン王がエチオピアの王様に言ったように: "これも、いずれ過ぎていく"。私たちも、本当に、この言葉を信じたいものです。

 

NordFX Analytical Group

 

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