USDJPY と GBPUSD: 2022年に起きたこと、2023年に起きること

一週間前は世界の大手金融機関のエコノミストによる2023年におけるEUR/USDの今後について述べてきました。ただ、私たちのレビューでは、USD/JPY と GBP/USDの主な通貨ペアについても長年取り上げてきました。今回、これらのペアを無視しては不公平となるでしょう。また、ユーロの次に日本円やイギリスポンドは、ドルインデックスの最も重要な構成通貨です(各13.6%、11.9%)。

今後の予想に加えて、いつもどおり、2022年のアナリスト予想がどのようなものであり、どの程度、近いものであったかについても見ていきます。

 


USD/JPY: まずは上昇、その後は下落

1年前のこのペアの予想では、 “日本には円安が必要”ということでした。確かに、その通りでした: 1月1日に115.00 でスタートしてから、超緩和政策とマイナス金利(マイナス 0.1%)により、このペアは10月21日に152.00 付近となりました。これは、32年ぶりの水準でした。財務省と日本銀行(日銀) は自国の通貨安を懸念して、円を支えるために緊急の為替介入をしました。また、円は米連邦準備制度理事会の極めて厳しいタカ派的な政策からソフトな政策に移行するといった期待からも支持されました。この結果、USD/JPY の年間推移は次のとおりでした (データは四半期末時点): Q1 - 121.00、Q2 - 135.00、 Q3 - 144.00 、 Q4 - 131.00。

1年前に米国と日本政府のアプローチの違いからドル高を疑うアナリストは、ほとんどいませんでした。ただ、これほど上昇するとは、ほぼ誰も予想していませんでした。最も近かったのは(それでも、程遠いですが) 、次のような予想をしていたオランダの銀行のING グループ (Internationale Nederlanden Groep)でした: Q1 - 114.00、 Q2 - 115.00、Q3 - 118.00、 Q4 - 120.00。続いて、モルガン・スタンレー (Q4 - 118.00) とアムンデイ(Q4 - 116.00)の順になります。

フランスの金融コングロマリットであるソシエテ・ジェネラル、イギリスのバークレイズ銀行、CIBC(カナダ帝国商業銀行)も高値116.00を示していましたが年末ではなく、第2四半期でした。さらに、これらの金融機関のアナリストによれば、円はドルを114.00-115.00に推移させなければならないとのことでした。 ゴールドマン・サックスが最も遠く、111.00で2023年を迎えると予想していました。

昨年の最終的な統計についてはまだわかりません。しかし、2022年の最終的な消費者インフレ率は2.9%になると予想されています。目標より、わずかに上回っていますが、昨年のインフレ抑制のために積極的な利上げをした国々よりは下回っています。これに加え、日銀予想では、2023年末にこの数値は1.6% に下落するかもしれないといわれています。そこで、論理的な質問:全てがとても順調であるのに、現在の金融政策を固持して生産者に課題をもたらす理由は?

日本銀行は昨年12月20日の最後の会合で金利据え置きを貫きました。しかし、それでもなお、国債利回りの変動幅を0.5%まで拡大することで市場を驚かせました。この決定により、円はドルに対して3%以上の上昇となりました。

さらに、第1四半期中は落ち着いた時期になる可能性が高く、日本の中央銀行による大きな政策変更はないでしょう。特定措置が講じられるのは4月8日以降のみだと予想されます。この日に日銀の黒田東彦総裁の任期が終了して、より積極的な後任者になる可能性があるからです。しかし、よりタカ派的な考えの候補者がいるにもかかわらず、抜本的な変化はほとんど期待できない可能性があります。

USD/JPYの相手国である米連邦準備制度理事会の2023年の計画については先週のレビューで取り上げました。日本政府が現在の立場を変えなければ、金利幅は拡大するでしょうが、それほどではないでしょう。つまり、かなり安定します。一部では、中国情勢が日本に深刻な影響を及ぼす可能性があると指摘するアナリストもいます。中国の経済指標が低迷を続ければ、日本通貨はアジアの投資家たちの間で"安全通貨"となり円高となります。

おそらく、世界の大手銀行のストラテジストたちに影響を与えたのは上記の要因です。そこで、ING はUSD/JPY が2023年末までに125.00 近くになると想定しています。ソシエテ・ジェネラルは似たような四半期予想を示しています: Q1 - 135.00, Q2 - 135.00, Q3 - 130.00 and Q4 - 125.00。HSBC も2024年には、ほぼ現在の水準の130.00付近になるとした見方をしています。

12月までは、まだ12ヵ月あり、この間に多くの予想外の事がある可能性があります。この3年間がいい証拠で: COVID-19 のパンデミックやロシアのウクライナへの武力侵攻が多くの予想や計算を狂わせました。だからこそ、より短期間に専門家の意見を知ることに興味があります。

このペアの第1四半期の動きについての意見は、かなり幅広くなっています。このペアがさらに下落して、124.00-125.00圏内になるというアナリスト(多くはありませんが)もいます。ゴールドマン・サックスとブラウン・ブラザーズ・ハリマンは、逆で、再び150.00 の高値になると予想しています。バークレイズ銀行とバンク・オブ・アメリカも146.00-147.00に上昇するとした見方です。ING、BNPパリバ、CIBCの予想はやや控えめ(136.00-138.00)ですが、多くのインフルエンサーが1月‐3月にドル高円安予想をしていることは明らかです。

 

GBP/USD: 未だに分かれ道に立つ

去年のこのペアの予想では"3つの分かれ道に立つ" という見出しでした。これは、イングランド銀行(英銀)が日本と違い、あまりにも不透明だったからです。そこには3つの選択があります: 上向き、下向き、横ばい。

イギリスのエネルギー依存度はEUとは比較にならないほど小さいものでしたが、ロシア制裁を伴う世界的な危機を回避できませんでした。2022年1月1日に1.3500でスタートしたこのペアは、 次のような推移でした(データは四半期末時点): Q1 - 1.3100、 Q2 - 1.2100、Q3 - 1.1100 、Q4 - 1.2000。 GBP/USD は9月26日に37年ぶりの安値となる1.0350前後となりました。

ING のアナリストは、米ドル高、安定したコモディティ通貨、低利回り通貨安のトライアングルの中間のどこかにポンドは下落すると予想していました。つまり、シナリオではGBP/USD  横ばいのはずでした: Q1 - 1.3300、Q2 - 1.3400、Q3 - 1.3400 、 Q4 - 1.3400。しかし、違いました。ただ、この違いは、イギリスのバークレー銀行の愛国心からなるシナリオと比べものにはなりません: Q1 - 1.3300、 Q2 - 1.3700、 Q3 - 1.4000、 Q4 - 1.4200。すなわち、1.4000の代わりに、このペアは第3四半期末に1.0350でした。その違いは3,850 ポイント! 

英銀の引締め状況とFRBの状況が緩和されるという期待から、ポンドは2022年10-12月に1.2000圏内まで上昇できました。しかし、ドイツのコメルツ銀行のアナリストは現在の状況は一休止といったところなので、ポンドへの圧力は高まると予想しています。

この危機からの経済回復でアメリカは、イギリスよりもかなりいい状況です。イギリスの中央銀行の総裁は、困難な時期であることを率直に語っていました。昨年から始まった景気後退は、中央銀行の予測によると2024年半ばまで続き、経済規模は2.9%縮小するといわれています。現在のポンド安は、大きな経常赤字とここ数年来の高いインフレ率にも関連しています。まず、この状況は、石油・ガスの輸入コストの急激な上昇で起きました。

物価上昇を抑制するために、2023年もイングランド銀行は利上げを継続する可能性が高くなります。今のところ、FRBと英銀の金利は、それぞれ4.50% と3.50%です。この差はわずか100 bpで、以前ほど大きいものではありません。 ドルが優位のままであり、イギリス政府がさらにタカ派的となれば、金利は等しくなるかもしれません。一方、エコノミストの間では、第1四半期に50bps(ベーシスポイント)、第2四半期に25bpsの利上げで4.25%が話題に取り上げられています。

このような状況で、イギリス最大手金融コングロマリットの一社であるHSBCは、GBP/USDの今後について次のように展開しています: Q1 - 1.2200、 Q2 - 1.2300、 Q3 - 1.2400 、Q4 - 1.2500。フランスのソシエテ・ジェネラルグループでは、相場を次のように見ています: Q1 - 1.2000、Q4 - 1.2400。

USD/JPYと同じく、GBP/USD の次の四半期予想もかなり具体的で多様です: TD セキュリティリサーチの1.0700 からシティバンクの1.2600 まで。この範囲の中央値が予想されています: BNPパリバ(1.0800)、バークレイズ(1.1300)、CIBC(1.1500)、スコシアバンク(1.2000)、ウエストパック・インスティチューショナル・バンク(1.2200)。

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来週は、年間と四半期予想から通常とおりの週間予想となります。そこで、ガイドラインがより明確になると思われます。

 

NordFX Analytical Group

 

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