2023年1月16日‐20日のFXと暗号資産(仮想通貨)の予想

EUR/USD: インフレ低下でドル下落

  • 先週の大きな出来事は、1月12日(木)に発表された米国消費者物価指数がドルにさらなる打撃を与えたことでした。実際の数値は、完全に市場予想に一致していました。消費者物価指数 (CPI)の年率は12月に7.1%から6.5%、食品とエネルギーを除くと6.0%から5.7%で2021年10月以来の低水準に下がりました。つまり、米国のインフレ率は6ヶ月連続、コアインフレ率は3ヶ月連続で鈍化しており、現在のFRBの金融政策を緩和する大きな誘因です。

    市場関係者は、2月のFOMC(連邦公開市場委員会)で金利が25ベーシスポイント(bp)しか引き上げられないと確信しています。特に、理事会のメンバーであるミシェル・ボウマンやサンフランシスコ連邦準備銀行(FRB) のメアリー・デイリー総裁がこのことについて述べていました。

    連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長は、インフレ率の安定した低下傾向が確信できるまで政府が金利をピークに維持すると一ヵ月前に発言していました。議長によれば、2023年の政策金利を5.1% に引き上げ、2024年までその水準を維持する見通しです。しかし、インフレ率、事業活動、労働市場などのデータを含む最新のマクロ統計では、 ピーク時の金利は4.75%を示唆しています。また、2023年末には4.50%に引き下げられる可能性もあります。

    これらの予想結果により、米国通貨はすべてのG10通貨に対して下げました。DXYドルインデックスは、2022年6月の安値を更新で102.08(9月末には114.00を超えてました)まで下落しました。10年債利回りは3.42%の1ヵ月での安値である一方、EUR/USDは昨年4月以来の高値1.0867に急伸でした。

    米国とドイツの 10 年債の利回りスプレッドは 2020 年 4 月以来の最低水準で、欧州諸国とのスプレッドを小さくしています。この推移は、EU経済が深刻な不況に陥る可能性が低下していることを示しています。また、ロシアからの供給問題にもかかわらず、ヨーロッパは暖冬でエネルギー価格は下落しました。これが、また、米国通貨に圧力をかけました。

    中国がドルを助ける可能性もありました。様々な推計によると、中国のGDP成長率は4.8-5.0%、2023年には、それ以上の可能性もあります。このような経済状況が世界のインフレ率を1.0-1.2%押し上げることになり、FRBのタカ派が金融引き締め策を維持することを明らかに助長させることにもなります。しかし、これら全ては将来的にです。市場は現在、2月1日の次回のFOMC とFRB高官によるこの結果に関する発言を待っているところです。

    EUR/USD の先週の終値は1.0833でした。アナリストの20%は、さらなるユーロ高で今後のこのペアの上昇を予想、50% が一部下げを取り戻すと予想しています。残りの30%のアナリストは、このペアについてはどちらの予想でもありません。D1の指標では、異なっています: 100%が緑、オシレーター系の25%は買われ過ぎ圏内です。このペアの直近サポートは1.0800、その後は、1.0740-1.0775、1.0700、1.0620-1.0680、1.0560、1.0480-1.0500。強気筋は1.0865、1.0935、1.0985-1.1010、1.1130の水準でレジスタンスに直面して、その後1.1260-1.1360 で足元を固めるでしょう。

    来週、トレーダーは月曜日がキング牧師の記念日で祝日であることを考慮しておく必要があります。予定としてはドイツの消費者物価指数(CPI)と景況感指数(ZEW)が判明する1月17日(火)が注目です。1月18日(水)は、ユーロ圏消費者物価指数と米国の小売売上高が発表されます。アメリカの生産者物価指数(PPI)の12月の数値も同日に発表です。

GBP/USD: UK GDPからのサプライズ

  • GBP/USD は、1月12日(木)のドルに対する幅広い圧力で12月15日以来の高水準となる1.2246まで上昇しました。イギリスのGDP は、翌13日(金)にはポンドの強気派にうれしいサプライズをくれました: この国の経済についての0.3% という下落予想に対して、突如、一ヵ月で0.1%のプラスに転じました。ただし、年率では、大幅下落でした: 前月の1.5%に対して0.2%。この結果、このペアの5日間の終値は、週高値より、やや下回った1.2234でした。

    ポンドにとって重要な日は、イングランド銀行(英銀)の次回会合が開かれる2月2日だと思われます。投資家がFRBの利上げペースが緩まると予想する一方で、イングランド銀行については、反対に金融引き締めがさらに強まると予想しています。金利は現在の 3.50% から夏までには 4.50% の水準まで上昇すると予想されており、ポンドには一定のサポートになることが見込まれます。

    短期的なGBP/USD の中央値予想は、不透明なようです: アナリストの10%が強気、 25% は弱気、大多数(65%)が中立の立場です。D1のオシレーター系では、90%が緑で、このうち三3分の1が買われ過ぎで、残り10% はグレーです。トレンド系では、100%が緑です。サポートは、1.2200-1.2210、1.2145、1.2085-1.2115、1.2025、1.1960、1.1900、1.1800-1.1840。このペアが上昇すれば、1.2250-1.2270、1.2330-1.2345、1.2425-1.2450、1.2575-1.2610、1.2700、1.2750水準でのレジスタンスに直面するでしょう。

    来週のイギリス経済に関しては、イギリスの労働市場について明らかになる1月17日(火)に注目です。消費者物価指数(CPI)のような重要なインフレ指標の値も同じ日に発表され、イングランド銀行の決定に影響を及ぼすことになります。イギリスの12月の小売売上データは週終わりの1月20日に発表予定です。クリスマス前の駆け込み需要により、11月の0.4%減に対し、0.4%増となる見込みです。

USD/JPY: 日本銀行からのサプライズを期待すべきか

  • 今週は円高が好感され、1月13日(金)もドル円を圧迫する動きが続き、127.45の安値をつけました。今週の取引終値は、やや高い127.85でした。

    何があったのでしょう? まず、ドルや米国債の下落で円高が進みました (日米スプレッドは2022年8月以来の低水準に落ち込み)。国債の動向に最も敏感な円は、ドルから2.5%を引き戻すことに成功しました。次に、マスコミによる影響もかなりありました。日本の読売新聞は、内部情報源を引き合いに出して1月17日‐18日に日本銀行(日銀)の幹部が金融政策に関する超ハト派的アプローチの議論をおこない、"悪影響を減らす"ために 国債購入の見極めについて報じました。政府のそのほかの調整についても否定されていません。

    日本銀行は、主要中央銀行の中でマイナス金利-0.1%の維持をしていた最後の銀行です。以前、金融政策の抜本的な変更は4月8日以降になると述べました。日銀の黒田東彦総裁が任期を終える日で、より引締めの立場をとる後任を迎える可能性があるからです。現在、ブルームバーグのインタビューに回答したほぼすべてのアナリストが、日本の中央銀行は来週、主要なパラメーターを変更せず、議論にとどまるだろうと考えています。同時、回答者の38% が実質的変更は4月または6月だと予想しています。

    もちろん、日本銀行の1月の会合でより正確な予想が可能になります。今のところ、今後の予想に関するアナリストの意見では、次のように分かれています: アナリストの50%が上向き調整、 50% が単にコメントを控えています。下落トレンド支持は、今回はゼロです。D1の指標では、GBP/USDを鏡に映したようになります。オシレーター系では、90% が赤、3分の1が売られ過ぎを示しており、残り10% がニュートラルグレイです。トレンド系では、100% が赤です。直近のサポートレベルの水準は、127.00-127.45、その後は 126.35-126.55、 125.00、121.65-121.85。レジスタンスは、128.00-128.25、129.60-130.00、131.25-131.70、132.85、133.60、134.40、そして 137.50。

    来週のイベントは、既に述べた日銀会合と金利決定に加え、市場の注目はその後の金融政策に関する記者会見や政府関係者の金融政策についての発言です。

暗号資産(仮想通貨): 雪解けか、それとも、暗号資産の春?

  • BTC/USD が、再び$18,500-20,000 付近に戻ってきました。この圏内は昨年 6 月からサポートで11月にレジスタンスに転じました。2017年12月もここで取引され、その後は長引く暗号資産の冬が続きました。ビットコインは、わずか3年後の2020年11月‐12月にはもとに戻りました。この上昇が、その後の強気相場の始まりとなりました: 6ヵ月もしないうちに、3.5倍に上昇して、2021年4月には$64,750 になりました。その後、再び、暴落しました。

    今回のビットコインはどのように推移するのでしょう: 2017年のように暴落でしょうか、それとも、2020年のように上昇するのでしょうか? 暗号資産の春の訪れなのでしょうか、それとも、単なる小さな雪解けなのでしょうか? この問いは、明らかにされていません。現在のこのペアの上昇は、デジタルゴールドが高くなっているのではなく、16週のドル安の可能性があります。米消費者物価指数の発表後、ビットコインは大きく上昇しました。このような背景からビットコイン楽観主義者の声はさらに自信に満ちて大きくなっていうように聞こえます。これに加えて、FTX 取引所の清算人が債権者への債務の一部を返済するために使用される50億ドル相当の流動資産を回収しました。一部のアナリストによると、暗号資産市場は、CPIの下落に伴った依然とした弱気のマクロ経済情勢をあまり心配する必要はないとのことです。

    Circleの戦略開発責任者であるダンテ・ディスパルテ氏は、2022年の氷河期にもかかわらずデジタル資産やブロックチェーンは経済に不可欠なツールであり続けると信じています。大手銀行や金融機関は、暗号資産を商品ラインアップに導入し続けるでしょう。ディスパルテ氏は、複数の暗号資産貸出業者やFTX取引所の破産のような出来事は、より責任ある手頃な価格の投資の基盤を築くものであり、業界にとっては非常に有益です。

    規制圧力の強化は投資家の興味と業界の信頼回復に役立ちます。待望のMiCA (Markets in Crypto Assets Regulation) が年内に施行されると期待されています。SECも、この方向で多くの重要なステップを踏んでいくことが見込まれます。

    もう一人、前向きな見方をしているのがサセックス大学のファイナンス教授であるキャロル・アレクサンダー氏です。前回の教授の予想では、BTCが2022年に$10,000の下落傾向にあるとのことでした。予想は、ほぼ当たっていましたが、そのとおりにはなりませんでした。しかし、こちらのファイナンスの教授は、2023年にビットコインが$50,000になると現在、予想しています。教授は、FTX取引所の崩壊後の“ドミノ倒し”がさらなる流入の材料になると信じています。“2023 年はバブル市場ではなく、強気相場になるでしょう”と教授は記述しています- 以前のような急騰は見られないでしょう。しかし、1、2ヶ月の安定した価格傾向が狭い幅での期間に見られ、短期的な急落もおそらく数回はあるでしょう”。

    アメリカの投資家でファンドマネージャーのビル・ミラー氏もビットコインを擁護しています。同氏は、分散型であるビットコインネットワークと中央集権型を混同すべきではないので、BTCをFTXやCelsiusの倒産に関連づけることは間違っていると考えています。同氏は、ビットコインに対する信頼を改めて確信して、年末には確実に上昇すると述べました。

    Altana Digital Currency ファンドの最高情報責任者であるアリステア・ミルン氏は、“2023年末には最低でも$45,000が見られるでしょう”と述べています 。しかし、同氏は、“中央銀行が不況を避けるために、[…]より高いインフレ目標を認めることになれば、ハード資産の人気が見込まれます” と警告しています。長期的な見通しでは、BTCは2024年末までに$150,000-300,000になるはずであり、“これが強気派にとってのチャンスのピークでしょう”。

    ベンチャーキャピタリストの三代目でDraper Fisher Jurvetson の共同責任者であるティム・ドレイパー氏も2024に期待しています。同氏は、今年予定されている半減期が大きな影響を及ぼし、ビットコインは最終的には$250,000になると予測しています。

    強気列車に乗っているもう一人の専門家は、2021年のビットコインの崩壊を予期したことで知られているアナリストのDave the Waveです。同氏は、ビットコインが現在、“長期的なレジスタンスの対角線” を突破する途上にあるといいます。同氏の意見では、"今後、1、2ヶ月のテクニカルな推移で突破できるかも知れない"と見ています。 Dave the Waveは、以前、 Logarithmic Growth Curve (LGC) モデルが2025年1月までにビットコインが16万ドルまで上昇する可能性を示していると述べています。

    暗号資産ヘッジファンドのArcane Assets の最高責任者であるエリック・ウォール氏は、より控えめな予想です: 同氏は、今後1年でビットコインが$30,000 になる可能性があると予想しています。エリック・ウォール氏は、頻繁にブロックチェーンセンターによって作成されたアナリスト分析ツールのBTC Rainbow Price Chartに基づいて発言しています。そして、同氏は、$15,400 の取引レートがビットコインの底値であると述べました。

    数多くの暗号資産のプロジェクトの創設者であり、CEOのJiang Zhuoer(ジャン・ジュアー)氏は、エリック・ウォール氏と同意見です。同氏の計算では、過去3回の弱気相場はすべて、前回の高値から底値まで同じ時間がかかっています。このことから、同氏は現在、弱気市場の底値は最後の横ばい期間にあると結論付けています。同氏の楽観的な予測によると、2018年のシナリオが繰り返される場合、BTC価格は次のブルランが始まるまであと2ヶ月は横ばいになる可能性があるとのことです。同時に暗号資産企業の倒産のようなことがビットコイン相場に大きな影響を与えることはなくなるでしょう。

    イギリスの国際金融コングロマリット、スタンダードチャータードのストラテジストは、この発言に強く異議を唱えています。ストラテジストによれば、“ますます多くの暗号資産企業や取引所が流動性不足に直面するので、より倒産や投資家の信頼感の崩壊につながること” になり、BTCは今年$5,000 に下落していく可能性があります。

    真実は真ん中にあると言われています。まさに、この “楽天-悲観” 的な立場にいるのがGalaxy Digital のCEOであるマイク・ノボグラッツ氏です。 同氏は、最近のCNBCとのインタビューで、暗号資産の見通しは良くないが、すべてが悪いわけでもないと述べています。レバレッジをかけたトレーダーが2022年12月に決済をして、起業家に“クリーン市場”と言われるものを作りあげました。さらに、市場関係者は、大幅に支出を削減しており、移行期でもこれは続くでしょう。 ノボグラッツ氏は、また、2023年は業界の今後の発展を決定づける年になると主張しています。同時に、GeminiとGenesisの問題を指摘しており、デジタル資産市場全体にとって好ましくない状況を招く恐れがあると述べています。

    もう一つ神経質になるのがバイナンスの状況です。最近のフォーブスの報道によれば、同取引所ではユーザーの資金引出しのため、120億ドルの資産を失ったと言われています。バイナンスのチャンポン・ジャオCEOが状況は落ち着いていると発言したにもかかわらず、資金流出は増加の一方です。

    2023年の新たな年を迎えました。どの予想どおりになるかは、まだ、11ヶ月半も先のことです。その一方で、このレビュー執筆時(1月13日土曜日)のBTC/USD は、$20,000 台を突破して、$20,500 圏内で取引されています。暗号資産市場時価総額は、0.968兆ドル(12月30日の安値は0.790兆ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、1週間で25 から 46 ポイントに上昇で、既に中央値に近づいてはいますが恐怖圏内のままです。

 

NordFX Analytical Group

 

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