2024年2月26日-3月1日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: ドルに対するECBの絶妙な言い回し

●2月13日に発表された米国の消費者物価指数(CPI)は予想を超えました。生産者物価指数(PPI)も国内産業のインフレ率の上昇を示しました。しかし、これにもかかわらず、ドルにさらなる支持はありませんでした。ドル指数(DXY)が2月14日から下落に転じる一方で、EUR/USD は徐々に上昇しました。

●米連邦準備制度理事会のFOMC(連邦公開市場委員会)の最新議事録が2月21日(水)に公表され、米国の規制当局が利下げを早急にしない可能性があることを思いだすことになりました。しかし、市場予想ではFRBがECBよりもかなり早く金融緩和に踏み切る可能性が大方を占めたままです。特に、ユーロ圏の高官の発言が常にこのような期待を煽るため、この要因が大きくドルに圧力をかけています。ECBのイザベル・シュナーベル専務理事は、インフレ率が中期的な目標水準である2.0%に持続的に戻ったとECBが確信するまで、金融政策は制限的であり続けなければならない述べました。

シュナーベル専務理事と同様のスタンスなのがECB加盟国であるドイツ連銀のヨアヒム・ナーゲル総裁です。2月23日(金)に総裁は、"利下げ措置が魅力的に見える人がいたとしても、時期早々である"と述べました。ナーゲル総裁によると、物価予想はまだ明らかではないため、 物価圧力に関する重要なデータが明らかになる第2四半期が利下げの検討には適切ということです。

ドイツ連銀の総裁は、インフレ率が急激に低下する期間は終了して、今後はいくらか戻す可能性があり、今後数ヶ月のインフレ率は目標水準の2.0%を上回ることに疑いの余地はないとした見方です(MUFG銀行の最新予想では、 2024年のユーロ圏のCPIを2.7%)。

EUR/USD は2月22日(木)に1.0887へ急騰しましたが、その後は ユーロ圏内の購買担当者景気指数(PMI)のデータがまちまちであったことから1.0802へ下落しました。フランスの製造業PMIの速報値は43.1ポイントから46.8ポイントに上昇で予想の43.5を上回りました。サービス業も45.4から48.0に上昇で、予想されていた45.7を超えました。これらの指標が大幅に予想を上回ったことから、投資家のリスク選好が刺激され、株式指数だけでなく、対ドルでユーロも買われました。

しかし、ユーロ強気派の喜びは束の間で、ドイツのPMIによって断ち切られました。ユーロ圏の経済の柱である製造業部門の指数は予想の46.1に対して45.5 から 42.3へ下落でした。ユーロ圏の製造業は47.0へ上昇予想に対して46.6から46.1の下落となりました。これらの指標がすべて、景気後退を示す重要な50.0を下回っていることに注意が必要です。サービス部門のみが重要な50.0を上回りました。全体として、ユーロ圏の総合PMIは48.9まで上昇で2023年6月以来の最も高い水準となりましたが、未だに7ヵ月連続でマイナス圏のままです。

大西洋の反対側については、これらの指標が米国経済の堅調さを示しています。速報値データでは、購買担当者景気指数のサービス部門が51.3 ポイント、製造業部門が51.5ポイントでした。木曜日は、通常どおり、米国の失業保険新規申請件数の発表があり、前週の21万3,000件から20万1,000件に減少(予想は21万7,000件)、労働市場の強さを示しました。

EUR/USD の先週の終値は1.0820でした。一部のアナリストによると、最近のマクロ経済データはドル安が一時的な現象を示しているため、DXYの上昇傾向が期待されます。 これが阻止される可能性は、経済や政治的な特殊事情が発生した時にのみということです。このレビュー執筆時の2月23日、50%のアナリストはドル高支持で、このペアの下落予想です。30%がユーロ支持の一方で、20% が中立の立場です。D1のオシレーター系では、赤が10%のみ、 15%がグレー、 75%が緑で、このうち、20%が買われすぎ圏内です。 トレンド系では比率が異なります: 35% が赤、65%が緑。直近のサポートは、1.0800、これに続き、1.0725-1.0740、1.0695、1.0620、 1.0495-1.0515、1.0450となるでしょう。強気筋は、1.0840-1.0865、1.0925、1.0985-1.1015、 1.1050、1.1110-1.1140、1.1230-1.1275でレジスタンスに直面することになるでしょう。

●来週の注目イベントは2月27日(火)に発表される米国の耐久財受注の発表です。翌日には2023年第4四半期の米GDP速報値の発表があります。木曜日にはドイツの小売売上高と消費者物価(CPI)のデータ、米国では個人消費支出指数と労働市場統計が発表されます。週の取引最終日は大きなボラティリティが予想されます。春の一日目に、ユーロ圏の年間インフレ率(CPI)と米国の購買担当者景気指数 (PMI)が公表されるからです。

 

GBP/USD: イギリス経済の勢いが増す

● 米国とユーロ圏の購買担当者景気指数に並んで2月22日(木)にイギリスも速報値が発表されました。イギリスの製造業部門の購買担当者景気指数 (PMI)は予想の47.5をやや下回ったものの、47.0から47.1へと若干上昇しました。サービス部門は、54.3で変わらずです。しかし、複合PMIは53.3で、予想や前回の52.9を上回りました。50.0を超えた緑色圏内が明らかにイギリス経済の見通の明るさを示しています。2023年後半のテクニカルリセッションは終了したか、少なくても終了に近づいているようです。

前回のレビューで、1.2500の強い長期的サポートからGBP/USD は1.2700へ上昇に向かうとしたスコシアバンクのエコノミストの予想を紹介しました。2月22日のイギリスのPMIが明らかになると、この予想どおりで、このペアは1.2709の高値をつけて、1.2600-1.2800の横ばい圏内のちょうど中央値に戻りました。

● イギリス経済の堅調なデータと世界的にリスク選好が回復したことにより、ポンドにはプラスの影響が及ぶはずです。このような状況を日本のMUFG銀行のストラテジストが、" FRBとECBが利下げに踏み切る時期を遅らせれば、イングランド銀行(BOE)も利下げの時期を遅らせるだろう"と著しています。イングランド銀行の2月1日の会合では、現行の5.25%の金利据え置きの決定を発表したことを思い出してみましょう。 これに伴い発言では"利下げ前に、消費者物価指数が2.0%まで低下して、この水準が保たれるというより多くの証拠が必要である" ということでした。市場関係者は、8月に利下げに踏み切ると予想しています。この予想が既に織り込まれているためGBP/USD の下落が防がれているのです。

MUFG は、"世界的の株式とポンドの相関関係は弱まりつつあるが、ドルとリスクの相関関係は強いままである。リスク選好が続けば、ポンド高の可能性がある"とした見方です。ただ、イギリス経済の上向きに対する懸念材料は残ったままであるため、GBPの上昇を抑制する可能性もあるとも警告しています。

GBP/USDの先週の終値は1.2670でした。直近のアナリストの中央値予想については、65%がこのペアの下落を支持する一方で、 35%が上昇支持です。 D1のオシレーターについては、10%だけが下落、 15%が横ばい、残り75%が上昇を示しており、このうちの10% が買われ過ぎの状況を警告しています。トレンド系ではかなり偏りを示しています: 90%が上昇、残り10% が下落。このペアが下落すれば、1.2635-1.2650、1.2570、1.2500-1.2535、1.2450、1.2370、1.2330がサポートになるでしょう。上昇すれば、1.2695-1.2710、1.2755-1.2775、1.2825、1.2880、1.2940、1.3000、 1.3140-1.3150でレジスタンスに直面します。

● 来週は、イギリス経済関連の重要なマクロ経済データの発表予定はありません。

 

USD/JPY: 月へ、そして次は、その先の火星に向かって

● 米国債10年利回りは現在、4.30%前後であり、低利回りとマイナス金利が円に対してドル支えとなったままです。USD/JPY は、先週もまた150.00 を超え、151.00台になろうとしていました。今回も達成できませんでした: 直近高値は150.76で、先週の終値は150.52でした。

USD/JPY の強気筋の警戒は、2022年10月と2023年11月に財務省の介入が150.00-152.00圏内だったことが大きな要因です。しかし、すべてのトレーダーが知っているように過去の結果が今後の結果となる保証はありません。つまり、財務省や日本銀行(日銀)が今回も同じようにするとは限りません。

日本のGDPは、この2四半期続いて落ち込んでいます。円安は、日本製品の輸出の魅力や競争力を高めるため、日本経済の刺激となります。これが日本の金融当局が金融引き締め策に消極的なことを物語っています。日本銀行の植田和男総裁によると、マイナス金利を含め金融政策の維持や変更については、"目標物価水準が持続的かつ安定する可能性がある場合"に限り、検討されるということです。

● 前述とおり、USD/JPY が151.00-152.00の高値圏圏内から下落する可能性は高いですが、 まだ100%には至りません。現在のこのペアのレートを一年前と比較すると約14%の上昇となります。一部のアナリストは、この数字が前年比20%に近づくと、日本の金融当局は神経質になり始めると指摘しています。今のところ、特にこの2年間は既にこの為替レートに適応しているため、比較的にリラックスして落ち着いています。つまり、ダンスケ銀行が予想した140.00までの下落に代わり、34年前の1990年4月の160.00の高値の可能性もあるかもしれません。

● 近い将来については、シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行のアナリストが1週間から3週間の間でのUSD/JPY は、148.70から150.90で取引される可能性が高いとした見方です。しかし、UOBは150.90を突破すれば、152.00に上昇することも否定していません。このレビュー執筆時では、40%のアナリストがドル高で、大半(60%)が円高予想です。D1のトレンド系とオシレーター系では、すべてが上昇を指しており、オシレーター系の 10%のみが買われ過ぎ圏内となっています。直近のサポートは、149.70-150.00に続き、148.25-148.40、147.65、146.65-146.85、144.90-145.30、143.40-143.75、142.20、 140.25-140.60となります。レジスタンスは、150.90、151.70-152.05、 153.15です。

● 来週の重要な日本経済関連の発表予定はありません。

 

暗号資産: 暗号資産の冬の終わりを告げる5つの理由

● 先週のビットコインの弱気筋と強気筋のバトルは静かでした。ピボットポイントを$51,500 としたBTC/USD は、$50,500-$52,500圏内の狭い横ばいでした。2月20日に強気筋は、レジスタンスを突破しようとしましたが失敗に終わり、このペアはこの圏内へと戻りました。しかし、経験どおり、静けさは永遠には続きません。変動の大きい暗号資産では特にですが、雷が鳴り、暴風が吹き、にわか雨と必ず変わります。それでは、天気が変わったら、何が予想されるのでしょうか?

●IntoTheBlockのリサーチ責任者であるルーカス・アウトムロ氏によれば、ビットコインが今後6ヵ月以内に新高値更新の$70,000を超える可能性は 85%だといいます。こちらのアナリストは上昇要因を5つ挙げています。

1. 4月の半減期: これは、4回目の半減期でブロック報酬が6.25 BTC から3.125 BTCに減り、売り圧力を減らすことになります。アウトムロ氏は、ビットコイン半減後のわずか1ヵ月で史上高値(ATH)になる可能性も否定していません。

2. ビットコインスポットETFへの継続的な資金流入: 多額の資金流入がいつまで続くかは不透明ですが、時間の経過と共に安定した資金流入で、重要が大きくなりビットコインの価格を押し上げることが予想されます。

3. FRBの金利政策: 2022年のFRBの金利に対する厳しい姿勢が、暗号資産を含むリスク資産における弱気傾向の基盤となりました。多くが2024年にインフレ率は10%から3% に下がっているので、FRBの政策移行と利下げサイクルに踏み切ると予想しています。"この予想が最近のビットコインと株価の上昇の主な要因となっているようだ。... 今回、ビットコイン価格の動きは、ナスダックやS&P 500が2ヶ月ぶりの高値をつけたとの相関関係にある従来の資産と密接に連動している" とアウトムロ氏は説明しています。

4. 米国大統領選挙: ジョー・バイデン現大統領がデジタル資産に反対しているにもかかわらず、選挙キャンペーンは暗号市場にプラスの影響を与えます。"予測市場ポリマーケットは現在、バイデン大統領の再選の可能性を33%にとどめ、より暗号資産に好意的なドナルド・トランプ氏の勝算が高い" とIntoTheBlockはレポートしています。FRBは 現米大統領の再選の可能性を高めるために、より積極的な金融緩和に踏み切り、株式や暗号資産市場に利益をもたらすかもしれません。

5. ヘッジファンド: アウトムロ氏は、2020年のCOVID-19パンデミック後にビットコインが回復した時に従来の大手金融機関が暗号資産の可能性に気がついたと示しています。スポットビットコインETFが始まり、ヘッジファンドは新たな資産クラスを築くチャンスをもち、デジタル資産の導入や受け入れ拡大につながりました。

しかし、IntoTheBlock は、これらのシナリオがいくつかの要因により変更する可能性があることを認めています。例えば、FRBが政策を緩和しなければ、ビットコインは10%の調整局面を迎えることもあります。 政治紛争もデジタルゴールドの価格にはマイナスの影響を与えます。大手参入者が倒産した場合の想定外の売り圧力も除外できません。

上述 (ポイント 3)にあるように、ビットコインとS&P500の相関関係は高まっており、BTCが米国株式市場に並んで上昇する可能性を示唆しています。S&P 500が5,000ポイント超えた後、投資銀行のゴールドマンサックスが 同指数の年末予測を5,200ポイントに修正したことがビットコインのさらなる支えになる可能性があります。

● すべてのトレーダーは、買い時と同じように売り時を決めることが重要であることを知っています。バーチャル・ベーコンとしても知られるデニス・リュー氏は数日前、市場がピークになったことを示唆する3つの要素明らかにした自身のビットコインの投資手法を公表しました。

1. 特定価格のマイルストーン:注目すべき最初の兆候は特定した価格にとどいていることです: ビットコインの$200,000とイーサリアの $15,000。 リュー氏の仮定は、歴史的なサイクルと収穫逓減が基本となっています。これは、明確な量的指標であり、手仕舞いする時にヤマ勘を避けることができます。

2. 時間を基本とした出口戦略: リュー氏が挙げる2つ目のベンチマークが時間的制約です。資産価格の推移にかかわらず、トレーダーは2025年末までにポジションを手仕舞う予定です。この決定は歴史的パターンの重要性が基本となっており、半減期サイクルの分析や強気市場の期間に基づいています。

3. 価格パターンのモニタリング: リュー氏の手法の最後の要素は価格パターン、特に200日移動平均線(EMA)と21週移動平均線(EMA)に対するBTCの動きを 注意深く観察することです。サポートレベルを下回る下落は、ビットコインの売り時のサインです。

●ビットコインの $200,000 は予想であり、しかも、比較的遠い未来であることは明白です。既に述べましたが、近い将来については、グラスノードの多くのオンチェーンインジケーターが既に"リスク圏内"の領域に入っています。 この4週間のかなりの上昇を考慮すると、比較的低い水準の実現利益となっています。グラスノードのアナリストの観察によると、ハイリスクインジケーターは通常、強気市場の早い段階で見られます。これは、"高い水準" の利益となると、ホドラーが利益を確定するために急激な下方調整につながる可能性があるためです。

アナリストのギャレス・ソロウェイ氏は、特に株式市場が調整した場合、ビットコインは$30,000まで下落することを述べました。そして、ビットコインの新たなサポートラインの可能性について"警告ライン"としました。 "私の警告ラインは、$30,000から$32,000. [...]。これより下がれば、私はかなり大量のBTCを購入します" と著しています。

投資家でMNトレーディングの創設者、 マイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏も市場に参入する前に20-40%の調整を待つことを勧めています。ポッペ氏は、ビットコインが $53,000-$58,000圏内になると、戻しがあると見ています。 "しかし"、"ビットコインを2、3年保有するつもりでビットコインを購入して、その間に$150,000まで上昇することを信じているなら、この [現在の] 価格で購入することを止めない"と付け加えました。

●先週のビットコインが横ばい(BTCの4%変動は間違いなく横ばいみなされる)、ライバルのイーサリアムの値動きはかなり大きくなっています。 昨年から回復して、1月末以来の素晴らしい上昇の35%の値上がりで$3,000と大幅に伸びました。 これは、DeFiセクターの復活と今年5月にETHベースのETFがローンチされることへの期待が関連しています。前回のレビューでは、有名なアナリストの一部がこれについて疑念を抱いていましたが、楽観主義のアナリストも多くいました。例えば、バーンスタインのアナリストは、米国証券取引委員会(SEC)が5月にETH-ETFを承認する可能性はほぼ50%であり、今後12か月以内に承認される確率はほぼ100%であると見方をしています。

"イーサリアムは、大きな利回り、環境にやさしいデザイン、新たな金融市場をつくりだす実用性から大手投資機関に導入される見込みがある。おそらく、SECからの明確なETFの承認がされるビットコインに代わる唯一のデジタル資産である" とバーンスタインのアナリストは主張しています。従来の株式市場関係者がビットコインETFと同様のスポットETH ETFの立ち上げを望んでいるだけでなく、"より透明でオープンなトークン化金融市場をETHネットワーク上に構築する"という意図を表していることもSECに影響を及ぼすというのがバーンスタインの見方です。スタンダードチャータード銀行の試算によると、ETH-ETFの承認が見込まれることで、コインの価格は近い将来に$4,000まで上昇する可能性があります。

● 2月23日晩のこのレビュー執筆時のBTC/USD は$51,000、ETH/USD は$2,935で取引されています。暗号資産市場の時価総額は、先週と変わらず1兆9500億ドルです。Crypto Fear & Greed指数では、 76ポイント(前週は72ポイント)で非常に貪欲圏内の境界線の下です。

 

NordFX Analytical Group

 

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